いじめを『見てただけ』がトラウマになる?親が知らない学校の現実【Rivers, 2009】
前回は以下
この論文を読んだきっかけ

前回に引き続き、「学校を変えるいじめの科学 」で紹介されていた論文を、詳しく調べてみました。
この本はいじめを科学的根拠に基づいて解説し、解決策を提示しているのですが、この本を読んでびっくりしたのが、いじめの加害者と被害者が将来にとって悪い影響を受けるのは容易に想像がつきますが、なんと、
いじめの「傍観者」でいるだけで、将来、うつ、不安、対人恐怖などの心の健康リスクが上昇する
ということが書いてあり、びっくりしました。いじめを目撃したら、自分自身の将来のためにも、そのいじめを止めたほうがよいのですね。。。
論文の題名とリンク

Rivers, I., Poteat, V. P., Noret, N., & Ashurst, N. (2009). Observing bullying at school: The mental health implications of witness status. School Psychology Quarterly, 24(4), 211–223. https://doi.org/10.1037/a0018164
https://psycnet.apa.org/record/2009-23923-001
学校におけるいじめの目撃: 目撃者という立場が精神的健康に与える影響
NotebookLMによる解説















🧠 PICO / PECO分析
Observing bullying at school: The mental health implications of witness status
(※横断研究なので PECO が本質的ですが、比較理解のため PICO も併記します)
📌 論文概要(前提)
- 著者:Ian Rivers ほか
- 対象:英国の中高生 2,002人(12–16歳)
- 研究デザイン:横断研究(質問紙調査)
- 主要テーマ:
👉 「いじめを目撃しただけの生徒(傍観者)」のメンタルヘルスリスク
🅿️ PICO分析(教育・臨床的説明用)
P(Population)
- 英国の中学生・高校生(12–16歳)
- 学校環境にいる一般生徒
Rivers2009
I(Intervention / Exposure)
- 学校で起きているいじめを目撃する経験(傍観者・目撃者)
- 直接の被害・加害は含まない場合も含む
Rivers2009
C(Comparison)
- 以下と比較
- いじめをほとんど目撃しなかった生徒
- いじめに関与していない生徒
- 回帰分析では
- 「被害者」「加害者」の影響を統計的に調整
Rivers2009
- 「被害者」「加害者」の影響を統計的に調整
O(Outcome)
精神的健康リスクの上昇
- 対人過敏性
- 抑うつ
- 不安
- 敵意
- 妄想的思考
- 一般的な心理的苦痛
- アルコール・薬物使用
Rivers2009
▶️ PICOでの結論(超要約)
いじめを「見ているだけ」でも、
被害者・加害者とは独立して
メンタルヘルスリスクが上昇する
🅿️🅴🅲🅾️ PECO分析(エビデンス評価向け・本命)
P(Population)
- 英国の一般中高生(12–16歳、n=2,002)
Rivers2009
E(Exposure)
- 学校でのいじめの目撃(witness status)
- 頻度・種類・場所を加味した chronicity score を使用
Rivers2009
C(Comparison)
- いじめを目撃しなかった/ほとんど関与していない生徒
- 解析時に
- 被害経験
- 加害経験
を共変量として調整
Rivers2009
O(Outcome)
- Brief Symptom Inventory(BSI)による
- 抑うつ
- 不安
- 対人過敏性
- 敵意
- 妄想的思考
- 心理的苦痛全般
- 物質使用(アルコール・薬物)
Rivers2009
▶️ PECOでの結論(論文の核心)
いじめの目撃は、
被害者であるかどうかに関係なく、
独立してメンタルヘルスリスクを予測する
🎥 YouTube向け「一言で言うと」
「何もしなかった子」も、
実は一番“静かに傷ついている立場”かもしれない本論文をもう少し詳しく(いじめの目撃だけで何%メンタルリスクが上がるのか?)
NotebookLMに質問してみました。
(1)いじめを目撃した人が、メンタルヘルスのリスクが上昇することについて、具体的に何が何%上がったのか教えてください
提供された資料には、「いじめを目撃したことでメンタルヘルスのリスクが具体的に何%上昇したか」という明確なパーセンテージ(%)の記載はありません。
その代わり、本研究では多重回帰分析という統計手法を用いて、いじめを目撃すること(傍観者であること)が、単独で複数のメンタルヘルスリスクを有意に高める要因になることを示しています。
具体的に、いじめの目撃によってリスク(症状のレベル)が上昇すると予測されたメンタルヘルスの指標は以下の通りです。
- 身体化(Somatic complaints): めまいや胸の痛みなど
- 強迫性(Obsessive-compulsiveness): 何度も確認する、集中困難など
- 対人過敏症(Interpersonal sensitivity): 傷つきやすさ、劣等感など
- 抑うつ(Depression): 絶望感、自殺念慮など
- 不安(Anxiety): 神経質、落ち着きのなさなど
- 敵意(Hostility): 苛立ち、他者に危害を加えたい衝動など
- 恐怖性不安(Phobic anxiety): 広場恐怖、人混みでの不安など
- 妄想的観念(Paranoid ideation): 他者への不信感、自分の不幸を他人のせいにするなど
- 精神病的傾向(Psychoticism): 罰を受けているという思い込み、他者に思考をコントロールされている感覚など
- 薬物やアルコールの使用(Substance use)
研究の重要な結論: この調査結果の最も重要な点は、自身が「いじめの加害者」や「被害者」であったことによる影響を統計的に除外した上でも、**「他人がいじめられているのを目撃すること」自体が、上記のメンタルヘルスリスクを有意に押し上げる(標準化偏回帰係数 $\beta$ = .07 〜 .15)**と判明したことです。
また、「過去に自分自身が被害者であったかどうか」に関わらず、目撃による心理的悪影響が及ぶことも確認されています。具体的な割合(%)こそ提示されていませんが、資料は「直接的ないじめの当事者でなくても、目撃するだけで心理的機能にマイナスの影響を与える」と強く警告しています。
(2)標準化偏回帰係数β(.07〜.15)の意味を詳しく教えて
この研究では、ある生徒のメンタルヘルスが悪化した原因を探るために「多重回帰分析」という統計手法を用いています。これは、ひとつの結果(メンタルヘルスの悪化)に対して、複数の原因(加害経験、被害経験、目撃経験)がそれぞれ「どの程度影響を与えているか」を同時に予測・計算する手法です。
2. 「偏(Partial)」の意味(最も重要なポイント)
「偏」回帰係数とは、他の要因の影響を取り除いた(コントロールした)上での純粋な影響力を示します。 いじめの現場では、「自分も被害に遭いながら、他のいじめを目撃している」というような生徒が多数存在します。単純な計算だと、「被害に遭ったことのダメージ」と「目撃したことのダメージ」が混ざってしまいます。 しかし「偏」回帰係数を用いることで、「加害による影響」と「被害による影響」を統計的にごっそり差し引くことができます。つまり、「純粋に傍観者として目撃しただけのダメージ」がどれくらいあるかをあぶり出しているのです。
3. 「標準化(Standardized)」の意味
「標準化」とは、異なる単位のデータを同じ土俵で比較できるように、尺度の基準を揃える(係数を-1から+1の範囲などに標準化する)ことです。数値がプラスなら「目撃すればするほど症状が悪化する」、マイナスなら「症状が軽減する」ことを示し、ゼロから離れるほどその影響力が強いことを意味します。
4. 「.07〜.15」という数値が意味する事実
研究の結果、「いじめを目撃すること」単独の標準化偏回帰係数(β)は、各メンタルヘルス指標において「.07から.15のプラスの範囲」に収まりました。
実際のデータ(資料内の表4)を見ると、具体的なβ値は以下のようになっています。
- 妄想的観念(他者への不信感など): .15
- 強迫性(集中困難など): .14
- 身体化(めまいや胸の痛みなど): .13
- 対人過敏症(劣等感など): .12
- 敵意(苛立ちなど): .11
- 抑うつ(絶望感など): .10
- 不安(神経質など): .09
- 精神病的傾向(思い込みなど): .07
統計学的に見ると、.07〜.15という数値は「小さな影響力」に分類されます(たとえば「自身が被害者であること」のβ値は.19〜.33と、より高い数値が出ているためです)。
しかし、ここで最も重要なのは、この小さな数値が「統計的に有意(単なる偶然のばらつきではなく、明確な関連がある)」と証明されたことです。
結論として: この「β = .07〜.15」という数値は、「自分自身は直接いじめられていなくても、他の人がいじめられているのを見ているだけで、精神的なストレス(不安や抑うつ、不信感など)が独自に蓄積していく」という事実を、客観的なデータとして裏付けています。研究者らは、無関係に見える傍観者の生徒であっても、心に確実なダメージを受けていることに注意を払う必要があると警告しています。
(3)いじめを目撃した生徒の薬物・アルコール使用リスクについて
提供された資料の研究結果によると、いじめを目撃した生徒は、薬物やアルコールの使用リスクが有意に上昇することが確認されています。
この研究における薬物・アルコール使用のリスクについて、以下の重要な事実が判明しています。
1. 「目撃すること」単独でリスクが上がる 多重回帰分析の結果、いじめを目撃することの薬物・アルコール使用(タバコ、アルコール、大麻、コカイン、接着剤などを含む)に対する標準化偏回帰係数(β)は「.06」「いじめを目撃すること」自体が独立して薬物・アルコール使用の引き金になることを示しています。
2. 被害者よりも目撃者の方が使用リスクが予測された この分析において非常に興味深いのは、他の役割との比較です。
- 加害者であること: 薬物・アルコール使用を強く予測した(β = .32)
- 目撃者であること: 薬物・アルコール使用を有意に予測した(β = .06)
- 被害者であること: 薬物・アルコール使用を予測しなかった(β = 0.01)
つまり、このデータ上では、直接いじめの被害に遭っている生徒よりも、いじめを傍観している生徒の方が、薬物やアルコールに手を出すリスクが高いという結果が出ています。
3. 「加害者かつ目撃者」の生徒は特にリスクが高い 研究では、ある状況では「いじめの加害者」であり、別の状況では「いじめの目撃者」でもあるという複数の役割を持つ生徒において、薬物・アルコールの使用率が他の役割の生徒よりも高くなることが指摘されています。このことから、いじめを目撃する生徒は、いじめを行う生徒と何らかの共通した行動特性や心理的背景を共有している可能性が示唆されています。
4. 過去の被害経験は関係ない メンタルヘルスの悪化と同様に、いじめを目撃したことによる薬物・アルコール使用リスクの上昇は、「その生徒自身が過去にいじめの被害者であったかどうか」には依存しませんでした。
結論として、いじめの現場を見ることは、生徒に心理的なストレス(不安や認知的不協和など)を与えるだけでなく、実際にアルコールや薬物といった不適応な対処行動(物質使用)へと走らせる明確なリスク要因になっていると結論づけられています。







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