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マンガ「はたらく細胞」を読んでいる子ども(5歳)に「マクロファージと樹状細胞ってどう違うの?」と聞かれたので、ChatGPTのDeepResearchに聞いてみた

何がきっかけか忘れてしまいましたが、最近、5歳の子「りりー」が、絵本 はたらく細胞 ばいきんvs.白血球たちの大血戦!から始まり、

にはまっています。マンガの「抗原提示!」のところがツボにはまったらしく、

「マクロファージと樹状細胞って何が違うの?」

と聞かれて、答えられなかったので、ChatGPTに聞いてみました。

普通のChatGPTに「マクロファージと、樹状細胞の違いについて、小学生でもわかるように、具体的に教えてください」と聞いてみた

いまいち、よくわかりません。聞き方を変えてみました。「小学生にもわかるように」がよくなかったのかもしれないと思い、消しました。

普通のChatGPTに「樹状細胞とマクロファージの違いについて、詳しく教えてください」と聞いてみた

結構長くなりましたが、いい感じに答えてくれました。

樹状細胞(Dendritic Cells, DCs)とマクロファージ(Macrophages)は、どちらも自然免疫の一部として働く抗原提示細胞(APC, Antigen Presenting Cells)ですが、それぞれ異なる役割や特徴を持っています。


1. 共通点

  • 自然免疫に属する細胞
    → どちらも生まれつき備わっている免疫システムに関与し、病原体を最初に認識する役割を担う。
  • 抗原提示能を持つ
    → 病原体(細菌やウイルスなど)を取り込み、その一部(抗原)をT細胞に提示し、適応免疫(獲得免疫)を活性化する。
  • 骨髄由来の免疫細胞
    → どちらも造血幹細胞から分化し、単球(Monocytes)を経て発生する。
  • 貪食作用(ファゴサイトーシス)を持つ
    → 病原体や異物を飲み込んで処理する能力を持つ。

2. 主な違い

項目樹状細胞(DC)マクロファージ
主な役割T細胞への抗原提示、免疫応答の指令異物の貪食・消化、組織修復、炎症制御
局在皮膚(ランゲルハンス細胞)、粘膜、リンパ節などほぼ全身の組織(特に炎症部位)
抗原提示能力非常に高い(主要なT細胞活性化細胞)低い(T細胞活性化能力は樹状細胞より弱い)
MHCクラスIIの発現量高い(T細胞への抗原提示に特化)低い(樹状細胞ほど強くない)
主な分化経路単球由来またはリンパ系前駆細胞から分化単球由来
寿命数日~数週間長い(数か月~数年)
炎症応答T細胞活性化を通じて適応免疫を誘導直接的な炎症応答、異物処理、組織修復

3. 樹状細胞とマクロファージの詳細な機能の違い

① 樹状細胞(DCs)

  • 抗原提示のエキスパート
    • 樹状細胞は、T細胞を最も効率よく活性化する細胞であり、「免疫システムの指揮官」とも呼ばれる。
    • 病原体や異物を貪食した後、リンパ節に移動し、T細胞に抗原を提示して適応免疫を開始する。
    • MHCクラスII分子を高発現し、ナイーブT細胞(未熟なT細胞)を活性化する。
    • ランゲルハンス細胞(皮膚)、プラズマサイド様樹状細胞(ウイルス応答)などのサブタイプが存在。
  • 形態
    • 樹状突起(デンドライト)と呼ばれる長い突起を持ち、周囲の異物を感知しやすい構造を持つ。
  • 機能の流れ
    1. 病原体を捕獲(貪食)
    2. 貪食した病原体の抗原をMHC分子上に提示
    3. リンパ節へ移動し、T細胞と相互作用
    4. T細胞を活性化し、適応免疫(獲得免疫)を誘導

② マクロファージ

  • 貪食と炎症応答が主な役割
    • 体内のあらゆる組織に存在し、異物の除去、組織の修復、炎症の制御などを行う。
    • **M1型(炎症性マクロファージ)M2型(抗炎症・修復型マクロファージ)**の2つの状態に変化できる。
      • M1型:炎症促進、病原体排除
      • M2型:組織修復、炎症の抑制
    • T細胞への抗原提示能力もあるが、樹状細胞よりは効果が低い。
  • 形態
    • 樹状細胞よりも丸みを帯びた形状をしており、活性化すると大きく膨らみ、貪食能が増す。
  • 機能の流れ
    1. 病原体・異物を貪食
    2. 消化・分解して無害化
    3. 炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-6など)を放出し、免疫応答を促進
    4. 必要に応じて抗原提示を行い、T細胞を活性化
    5. 組織修復や炎症抑制(M2型にシフト)

4. まとめ

特性樹状細胞(DC)マクロファージ
主な機能T細胞を活性化し、適応免疫を開始貪食・異物除去、炎症応答、組織修復
局在皮膚・粘膜・リンパ節ほぼ全身の組織
抗原提示能力高い(T細胞活性化の主役)低い(主に局所的な炎症制御)
貪食能力低め(主に抗原処理)高い(異物を直接除去)
寿命短い(数日~数週間)長い(数か月~数年)
  • 樹状細胞は「指揮官」:T細胞を活性化し、適応免疫を開始する。
  • マクロファージは「掃除屋」:異物の貪食、炎症の制御、組織修復を行う。

このように、両者は連携しながら免疫システムを維持し、感染防御や炎症の調整を担っています。

すごいですね。わかりやすく表までつくってくれました。

Perplexityに「樹状細胞とマクロファージの違いについて、詳しく教えてください」と聞いてみた

次に、Perplexityにも同じ質問をしてみました。こっちの方が短くて、Citationsのリンク先もリストアップしてくれて、読みやすいかも。

樹状細胞とマクロファージの違い

樹状細胞とマクロファージは、どちらも免疫系において重要な役割を果たす白血球の一種ですが、それぞれ異なる特徴と機能を持っています。

樹状細胞の特徴と役割

  • 形態: 樹状細胞は名前の通り、樹の枝のような突起を持つ形状が特徴です125
  • 抗原提示能力: 樹状細胞は非常に強力な抗原提示能力を持ち、異物(病原体やがん細胞)の断片を処理し、主要組織適合性複合体(MHC)に結合させてT細胞に提示します。この能力はマクロファージよりも優れています15
  • 役割:
    • 獲得免疫を開始する重要な役割を担い、ヘルパーT細胞やキラーT細胞(CTL)を活性化します15
    • 自ら攻撃することはなく、異物の情報を伝えることで免疫応答を誘導します25
  • 分布: 樹状細胞は全身の組織に存在し、部位によって異なる名称が付けられています(例: 表皮ではランゲルハンス細胞)26
  • 治療への応用: 樹状細胞ワクチン療法など、がん免疫療法への利用が期待されています25

マクロファージの特徴と役割

  • 形態: マクロファージは「大食細胞」とも呼ばれ、体内を移動しながら異物や死んだ細胞を貪食する能力を持つ34
  • 抗原提示能力: マクロファージも抗原提示細胞として働きますが、その能力は樹状細胞ほど強力ではありません5
  • 役割:
    • 病原体や死んだ細胞の破片を飲み込み、分解することで組織の健康維持に寄与します34
    • 炎症反応や免疫応答を調節するため、他の免疫細胞にシグナルを送ります34
    • がん組織内では腫瘍関連マクロファージ(TAM)として働き、場合によってはがんの増殖や浸潤を促進することがあります3
  • 自然免疫との関係: マクロファージは主に自然免疫で働きますが、獲得免疫にも関与します4.

比較表

特徴・機能樹状細胞マクロファージ
抗原提示能力非常に強力比較的弱い
主な役割獲得免疫の開始異物の貪食・炎症反応の調節
自ら攻撃するか攻撃しない異物や病原体を攻撃・分解
分布全身組織(部位による名称あり)全身で移動可能
がんへの影響Tリンパ球活性化で攻撃力向上腫瘍関連マクロファージとして促進もあり得る

樹状細胞は獲得免疫と自然免疫をつなぐ重要な役割を果たし、特に抗原提示能力で優れています。一方、マクロファージは自然免疫で主に働きながらも抗原提示や炎症調節など幅広い機能を持つ点で異なります。

Citations:

  1. https://tokyoca.jp/wp/archives/glossary/%E6%A8%B9%E7%8A%B6%E7%B4%B0%E8%83%9E
  2. https://www.kango-roo.com/word/20746
  3. https://research.kobayashi.co.jp/glossary/macrophage.html
  4. https://p.ono-oncology.jp/immuno-oncology/01/03_about/01.html
  5. https://biken.yawaraka-science.com/qa/detail/101
  6. http://files.jsi-men-eki.org/general/q_a/inaba.pdf
  7. https://www.kango-roo.com/word/3028
  8. https://ruo.mbl.co.jp/bio/product/allergy-Immunology/article/Natural-immunity-Acquid-immunity.html

最後に、ChatGPTのDeepResarchに「樹状細胞とマクロファージのそれぞれの機能と、違いについて、MHCや、細胞膜たんぱく質の種類に関しても含めて、詳しく教えてください」と聞いてみた

2025年2月頃から始まったDeepResearchですが、普通のChatGPTと比べて

  • 10分くらいかけて、すごく詳しく調べてくれる(すぐに結果が出てこないので、結果を見るまで、他のことをしている必要がある。)
  • 最初に、どこをより詳しく調べてほしいのか、AIの方から、逆質問が飛んできて、それに人間が回答すると、AIが2回目の指示に従って、調べ始める
  • AIが調べている経過を、示してくれる(上の画面の右側の部分)
  • 引用文献のリストも提示する

という特徴があります。今回、「樹状細胞とマクロファージのそれぞれの機能と、違いについて、MHCや、細胞膜たんぱく質の種類に関しても含めて、詳しく教えてください」と聞いてみたあと、DeepResearchからの上のような質問に対し、

免疫応答の役割、発現する分子、シグナル伝達経路のすべてについて知りたいです。
細胞膜タンパク質について、主にCDに焦点をあててください
細菌やウイルスが感染した場合に対する免疫応答に関連付けて説明してください

と答えたら、以下のような回答がありました。超長いです。ちゃんと英語のサイトからも調べてくれて、イイ感じでした!今後、何かを調べることはAIがやってくれるようになるので、人間のすることは、

にシフトしていくようになりそうです。子どもの教育も、それを踏まえて、考えていかなければと思いました。最近読んだ「第3版 役員1年目の教科書 」(2024年)にも、以下の図のように

と書いてあり、なるほどと思いました。

出典:「第3版 役員1年目の教科書 」(2024年)

DeepResearchの回答

了解しました!樹状細胞とマクロファージの免疫応答の役割、発現する分子(特にMHCやCD分子)、シグナル伝達経路について、細菌やウイルス感染時の免疫応答に関連付けて詳しく調査します。

調査が完了次第、お知らせしますので、少々お待ちください。Research completed in 5m· 16 件の情報源

1. 免疫応答における役割

  • 樹状細胞(DC)の役割: 樹状細胞は体内の「見張り役」として働き、自然免疫による病原体の検出と適応免疫の活性化をつなぐ重要な役割を担います​thermofisher.com。末梢組織で常に抗原をサンプリング(捕捉)しており、病原体由来の異物を貪食・取り込みます​seikagaku.jbsoc.or.jp。病原体侵入をPRR(パターン認識受容体)で感知すると成熟(活性化)し、抗原提示能が飛躍的に向上します​seikagaku.jbsoc.or.jpthermofisher.com。取り込んだ抗原由来ペプチドを主要組織適合遺伝子複合体II(MHCクラスII)上に提示し、リンパ節などに移動してナイーブT細胞を活性化します​seikagaku.jbsoc.or.jp。またMHCクラスI分子を介した交差提示によってCD8⁺T細胞(キラーT細胞)を初期活性化する能力も持ちます​thermofisher.com。さらにサイトカイン(例えばIL-12やインターフェロン)やケモカインを分泌して他の免疫細胞の分化や誘導を助け、適切な免疫応答(Th1やTh2、制御性T細胞の誘導など)を導きます​thermofisher.comthermofisher.com。平常時(非感染時)には抗原を取り込みつつもMHC IIや共刺激分子の発現が低く抑えられているためナイーブT細胞を活性化せず、自己寛容の維持に寄与します​jbpo.or.jp。このようにDCは病原体侵入時に成熟して適応免疫の「司令塔」となり、免疫応答の誘導と制御に中心的な役割を果たします。
  • マクロファージ(Mφ)の役割: マクロファージは長寿命の貪食細胞で、好中球とともに感染の現場に最初に駆け付ける「第一応答細胞」です​thermofisher.com。組織中に常在し、病原体や老廃細胞の破片を認識して貪食・分解処理することで、生体防御と恒常性維持に寄与しています​thermofisher.com。細菌やウイルスが侵入すると、マクロファージは速やかにサイトカインやケモカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6、CXCL8〈IL-8〉など)を放出し炎症反応を引き起こして、追加の免疫細胞(好中球やNK細胞など)を感染部位へ呼び寄せます​thermofisher.com。この炎症誘導は感染初期防御に不可欠であり、マクロファージは“炎症の開始役”として働きます​seikagaku.jbsoc.or.jp。また、マクロファージも抗原提示細胞としての機能を持ち、貪食した異物を処理してMHCクラスII上で提示することでヘルパーT細胞を刺激します​thermofisher.com。特に既に活性化されたエフェクターT細胞やメモリーT細胞に対して抗原を提示し、その働きを増強する役割があります(ナイーブT細胞の初期活性化は主にDCが担う)​seikagaku.jbsoc.or.jp。さらにヘルパーT細胞(Th1)から受け取るIFN-γやCD40リガンド刺激に応答し、殺菌能を増強(活性化マクロファージ、いわゆるM1状態)して難治性の細菌を排除します。加えてマクロファージは組織のリモデリングや損傷修復、不要な細胞の貪食処理など、生体防御以外でも“掃除屋”兼“メンテナンス役”として働きます​thermofisher.com。要するに、マクロファージは感染現場で直接病原体を排除しつつ、放出するメッセンジャー分子で免疫系全体に警報を発する役割を果たします。
  • 役割の違いの概略: 樹状細胞とマクロファージはいずれも異物の貪食・認識と免疫活性化に関与しますが、その役割は明確に分業されています。樹状細胞は抗原提示を通じて適応免疫(T細胞やB細胞応答)を立ち上げるスペシャリストであり​thermofisher.com、リンパ節へ抗原情報を運んでナイーブT細胞を強力に刺激できる唯一の細胞種です​jbpo.or.jp。一方、マクロファージは感染初動での貪食・病原体排除や炎症の誘導といったエフェクター機能を担う細胞で、即座の防御反応に優れています​thermofisher.com。両者とも抗原提示能を持ちますが、樹状細胞は高発現するMHC IIと共刺激分子によってナイーブT細胞を初期活性化できるのに対し、マクロファージは主にエフェクターT細胞を再刺激する役割といえます。また、樹状細胞は適切な刺激があると成熟して遊走能を獲得し二次リンパ組織へ移動しますが、マクロファージは基本的に局所組織に留まりその場で働きます。総じて、樹状細胞は「情報伝達と指令役」、マクロファージは「現場の処理と戦闘役」として相補的に働き、協調して免疫防御にあたっています。

2. 発現する分子

  • MHCクラスIおよびIIの発現レベルと機能: 樹状細胞とマクロファージはいずれも「プロフェッショナル抗原提示細胞」であり、抗原提示に必要なMHCクラスI分子とクラスII分子を発現します。MHCクラスIは全ての有核細胞に常時発現しており、細胞内で産生されたペプチド抗原(ウイルス感染細胞のウイルス由来タンパク質や細胞内寄生菌由来抗原、がん変異タンパク質など)を細胞表面に提示してCD8⁺T細胞(細胞傷害性T細胞、CTL)に認識させる役割を担います​seikagaku.jbsoc.or.jp。一方、MHCクラスIIは主に抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞など)に発現し、貪食・取り込んだ細胞外由来の抗原ペプチドを提示してCD4⁺T細胞(ヘルパーT細胞)を活性化します​seikagaku.jbsoc.or.jp。樹状細胞は未成熟時にはMHC IIの発現はそれほど高くありませんが、病原体由来のPAMP刺激で成熟するとMHCクラスII分子を飛躍的に増やし、高効率な抗原提示が可能になります​thermofisher.com。成熟DCは同時にMHCクラスIも豊富に発現し、交差提示能力の高いサブセット(cDC1細胞)では取り込んだ外来抗原をMHC I経路に載せてCD8⁺T細胞の初期活性化を誘導します​thermofisher.com。マクロファージも平常時からMHC IIを発現していますが、そのレベルは組織の種類や活性化状態によって変化します。特にTh1細胞から分泌されるIFN-γを受け取るとMHC IIの発現が著明に増加し、抗原提示能が強化されます(古典的に活性化されたM1マクロファージではMHC II高発現が特徴です​thermofisher.com)。MHC IIを介した抗原提示によってナイーブCD4⁺T細胞はエフェクターT細胞(Th1やTh2など)へと分化し、B細胞の抗体産生やマクロファージの活性化を助けます​seikagaku.jbsoc.or.jp。両細胞のMHC発現の違いとしては、樹状細胞は適切な刺激下で非常に高いMHC II発現を示すのに対し、マクロファージは刺激がない状態では比較的低~中程度のMHC II発現に留まる点が挙げられます。ただし、マクロファージも活性化されれば十分なMHC II発現で抗原提示能を発揮しうるため、適応免疫応答では両者が協調して働きます。なお、MHCクラスIについては樹状細胞・マクロファージともに発現しているため、これら細胞自身がウイルス感染した場合などにはウイルス由来抗原をCTLに提示して直接攻撃の標的となりえます。また樹状細胞は交差提示によって、自身が感染しなくても取り込んだ外来由来抗原をMHC Iで提示しCTLを活性化できる点で特に優れています​thermofisher.com
  • 共刺激分子(CD80、CD86、CD40など)の発現と役割: T細胞を完全に活性化するには、抗原-MHCによるシグナル(シグナル1)に加えて、APC上の共刺激分子が提供する「セカンドシグナル(シグナル2)」が必要です​jbpo.or.jp。樹状細胞・マクロファージはいずれも共刺激分子としてB7ファミリーのCD80(B7-1)やCD86(B7-2)、さらにTNFファミリーのCD40などを発現します。未熟な樹状細胞ではこれら共刺激分子の発現は低く、抗原提示だけではナイーブT細胞を活性化できません​jbpo.or.jp。しかしPAMP刺激による成熟時にCD80/CD86やCD40分子を急速に高発現し、ナイーブT細胞に強力なシグナル2を与える能力を獲得します​thermofisher.comjbpo.or.jp。成熟DCはリンパ節で抗原特異的T細胞に出会うと、MHC-抗原複合体による刺激と同時にこれら共刺激分子を介してT細胞を活性化し、大量のIL-2産生とクローン増殖を引き起こします。マクロファージも安静時にはCD80/CD86の発現は低めですが、細菌成分やサイトカイン刺激を受けた後には発現が上昇します。例えば細菌のLPS刺激やIFN-γなどにより古典的に活性化されたM1型マクロファージでは、MHC IIとともにCD80、CD86の発現が亢進することが知られています​thermofisher.com。このように活性化マクロファージは抗原提示能と共刺激能が高まり、特に既存のエフェクターT細胞を再刺激してサイトカイン産生や細胞傷害活性を引き出す役割を果たします。CD40に関しては、樹状細胞・マクロファージ双方に発現する重要な共刺激分子です。CD40はヘルパーT細胞が発現するCD40リガンド(CD154)と結合し、APC側に逆シグナルを伝達します。その結果、マクロファージでは殺菌能力の飛躍的増強(ファゴリソームのpH変化や一酸化窒素〔NO〕産生亢進など)が誘導され、難殺菌性の細胞内寄生菌(結核菌など)の排除に必須となります。また樹状細胞ではCD40刺激によりIL-12の産生が誘導されてTh1応答を促進するなど、T細胞からのフィードバック信号としてAPCの機能を高めます。このように共刺激分子は、抗原提示がT細胞活性化という成果に結びつくための「アクセル」として機能し、特に樹状細胞ではナイーブT細胞の初期活性化に不可欠で、マクロファージではエフェクターT細胞との協働に重要です​seikagaku.jbsoc.or.jp
  • CD14の発現と役割: CD14は主に単球・マクロファージ系が高発現する膜表面分子で、細菌由来リポ多糖(LPS)の受容体(補助受容体)として働きます。マクロファージはCD14を高濃度に発現し、可溶性LPS結合タンパク質(LBP)によって運ばれてきたLPSを捕捉してTLR4/MD-2受容体複合体に受け渡す役割を担います​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。すなわち、CD14はTLR4のコレセプターとしてLPS認識に必須であり、CD14–MD-2–TLR4複合体が形成されることでマクロファージ内のシグナル伝達が活性化され、TNF-αやIL-1βなど炎症性サイトカイン産生が誘導されます​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。実際、CD14遺伝子多型によりCD14発現が低下するとLPSに対する免疫活性が変動することが報告されています​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方、樹状細胞は成熟過程で単球由来になる場合を除き、典型的なDCサブセット(例えば皮膚ランゲルハンス細胞や真の骨髄系DC)はCD14発現が低い傾向があります。樹状細胞もTLR4を発現しLPSに応答しますが、CD14は発現していなくても近隣から供給される可溶型CD14(肝細胞やマクロファージ由来)などを利用してLPSを認識できます。要するに、CD14はマクロファージの特徴的マーカー兼受容体であり、グラム陰性菌感染時の迅速な認識と活性化に寄与します。樹状細胞はCD14非依存的にTLR4を介したLPS認識・成熟が可能ですので、CD14発現の有無は両者の系譜の違いを反映する指標といえます。
  • 特異的な受容体(PRRやFc受容体など): 樹状細胞とマクロファージは、ともに広範なパターン認識受容体(PRR)群を発現し、病原体由来の分子パターンを検知します​seikagaku.jbsoc.or.jp。代表的なPRRであるToll様受容体(TLR)は両者に発現し、細胞表面のTLR1/2/4/5などは細菌由来のペプチドグリカンやLPS、鞭毛などを、エンドソーム内のTLR3/7/8/9はウイルス由来の核酸(dsRNA、ssRNA、CpG DNAなど)を認識します​thermofisher.com。樹状細胞は特に多様なTLRを備え、樹状細胞亜集団ごとに特徴的な受容体を持ちます(例:プラズマサイトイド樹状細胞はTLR7/9を高発現しウイルスRNA/DNA検知とI型IFN産生に特化​thermofisher.com)。また樹状細胞はC型レクチン受容体も多く発現し、例えばDC-SIGN (CD209)は樹状細胞特有の受容体でマンノースやフコースを含む病原体表面の糖鎖を認識し抗原取り込みに寄与します。マクロファージもデクチン-1 (CLEC7A, β-グルカン受容体)thermofisher.comやマンノース受容体(CD206)、スカベンジャー受容体(異物貪食受容体)など多数の受容体を発現し、細菌・真菌から自己のアポトーシス細胞まで幅広く認識・貪食します。また、細胞質内にも**RIG-I様受容体(RLR: RIG-IやMDA5)NOD様受容体(NLR: NOD2やインフラマソームセンサーのNLRP3など)**が発現し、ウイルスRNAや細菌の細胞壁成分、細胞障害のシグナル(DAMPs)を検知します​seikagaku.jbsoc.or.jp。これらPRRが活性化されるとNF-κBやインターフェロン調節因子(IRF)経路が作動し、サイトカイン産生や共刺激分子発現増加といった細胞の活性化が起こります​seikagaku.jbsoc.or.jp。一方、Fc受容体も両者が発現する重要な受容体です。マクロファージは高親和性IgG受容体(FcγRI; CD64)や中・低親和性受容体(FcγRII; CD32、FcγRIII; CD16)を豊富に持ち、オプソニン化(抗体や補体で標識)された微生物を効率良く認識・貪食します​thermofisher.com。特にIgGでコーティングされた細菌やウイルス、あるいは死細胞などは、マクロファージのFcγ受容体を介した貪食(抗体依存性食細胞作用: ADCP)によって速やかに除去されます。補体のC3bを認識する補体受容体(CR1, CR3/CD11b-CD18 など)も発現しており、オプソニン化病原体の取り込みに寄与します。樹状細胞もサブセットや成熟段階によってはFcγRII(CD32)やFcγRIII(CD16)を発現し、抗原-抗体複合体を取り込むことができます。ただし、樹状細胞はマクロファージほどには貪食・消化に特化しておらず、取り込んだ抗原を完全に分解し尽くすよりも、一部をペプチドとして提示する役割に重きがあります。そのため、樹状細胞では貪食受容体による取り込みに加え、マクロピノサイトーシス(胞飲)による抗原取り込みや、特異的な抗原受容体(例えばB細胞由来抗体を樹状細胞が表面に取り込み抗原捕捉に使う場合もある)が利用されます。まとめると、マクロファージは病原体そのものを捕えて排除するための多種多様な受容体(PRRおよびオプソニン受容体)を装備し、樹状細胞も抗原検知の受容体を広く持ちながら、特に抗原の捕捉と提示に適した受容体や機構を備えていると言えます。

3. シグナル伝達経路

  • 樹状細胞とマクロファージの主要なシグナル伝達経路: これらの細胞は、病原体を認識した際やサイトカイン刺激を受けた際に、細胞内で様々なシグナル伝達カスケードを活性化します。代表的な経路としてNF-κB経路MAPキナーゼ(MAPK)経路JAK-STAT経路が挙げられ、さらにIRF経路(インターフェロン調節因子)なども免疫応答で重要です。
    • NF-κB経路: NF-κBは炎症性サイトカイン遺伝子の発現誘導に中心的な転写因子で、TLRやIL-1受容体、TNF受容体など多くの受容体の下流で活性化されます。樹状細胞やマクロファージがTLRを介して病原体由来物質を検知すると、アダプター分子(MyD88やTRIFなど)のリクルートに続きIKK複合体の活性化を経てNF-κBが核内に移行し、標的遺伝子の転写を促進します​seikagaku.jbsoc.or.jp。NF-κBによって誘導される主な遺伝子産物は炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-12など)やケモカイン(CXCL8〈IL-8〉など)、および共刺激分子(CD80/CD86など)の発現増加です​seikagaku.jbsoc.or.jp。例えばグラム陰性菌由来LPSをTLR4/CD14で認識した場合、MyD88依存経路によりNF-κBが活性化され、TNF-αやIL-6が大量に産生されます。実際、MyD88ノックアウトマウスはLPS投与によるショック(全身性炎症反応)に耐性を示し、マクロファージからの炎症性サイトカイン産生も起こらないことが報告されており、NF-κB経路の要であるMyD88の重要性を示しています​seikagaku.jbsoc.or.jp。樹状細胞においてもTLRシグナルによるNF-κB活性化は成熟(抗原提示能と共刺激能の獲得)に直結しており、NF-κB経路が阻害されると樹状細胞はT細胞刺激能を十分発揮できません。NF-κB経路は早くから活性化される経路であるため、細菌やウイルス感染の数分~数時間以内に始動して初期免疫応答の起点となります。
    • MAPK経路: マクロファージや樹状細胞では、TLR刺激やサイトカイン受容体刺激により並行してMAPキナーゼ系(ERK、JNK、p38など)も活性化されます。MAPK経路は細胞質のキナーゼカスケード(例えばTAK1→MKK→ERK/p38/JNK)を経て転写因子AP-1(Fos/Jun)などを活性化し、炎症性サイトカインやケモカインの遺伝子発現を誘導します。NF-κBとAP-1は協調して働き、多くのサイトカイン遺伝子の転写を増幅します。そのため、MAPK経路はNF-κB経路とともに炎症応答の主要エンジンと言えます。例えばp38 MAPKはマクロファージでのTNFやIL-12産生を増強し、樹状細胞ではTLR刺激下での成熟やサイトカイン産生(例えばIL-12p70産生)に必要とされています。これら経路の活性化により、マクロファージでは貪食能や殺菌能の調節に関わる遺伝子(iNOSや酵素群)の発現変化も起こり、樹状細胞では遊走に必要な受容体(CCR7など)や抗原提示分子の発現増加が誘導されます。総じて、MAPK経路はNF-κB経路と並んで自然免疫細胞が病原体認識後に適切な炎症反応を立ち上げるためのシグナル伝達網となっています。
    • JAK-STAT経路: JAK-STAT経路はサイトカイン受容体の下流で働く主要経路で、マクロファージ・樹状細胞の機能分化に深く関与します。多数のサイトカイン(インターフェロン群、インターロイキン群など)が受容体二量体に結合すると、付随するヤヌスキナーゼ(JAK)が活性化され、受容体細胞質尾部のチロシンリン酸化を介してSTAT転写因子がリクルート・リン酸化されます。活性化したSTATは二量体化して核内に移行し標的遺伝子の転写を制御します。マクロファージではIFN-γによるSTAT1経路IL-4/IL-13によるSTAT6経路が典型的で、それぞれM1型(炎症性)とM2型(修復・抑制性)への分化を誘導します。例えばIFN-γ刺激下ではSTAT1が活性化され、誘導される遺伝子にはMHCクラスIIやTNF、そして殺菌酵素群(iNOSなど)が含まれ、これにLPS/TLR刺激によるNF-κB経路も加わることでM1マクロファージへの分極が起こります​thermofisher.com(M1はIL-12やTNFの高産生能、ROI/NO産生能、MHC II・CD80/CD86高発現が特徴​thermofisher.com)。一方、IL-4/IL-13刺激下ではSTAT6が活性化され、マクロファージはアルギナーゼやマトリックスメタロプロテアーゼ、IL-10高産生などのM2型極性を示すようになります。樹状細胞においても、例えばGM-CSFやFlt3Lなど樹状細胞を分化・増殖させるサイトカインはJAK-STAT経路を介して作用しますし、成熟した樹状細胞が受け取るサイトカイン信号(例えばIFN-γによる活性化、IL-10による抑制など)もSTAT分子を介して遺伝子発現プログラムを変化させます。JAK-STAT経路は主に他の免疫細胞からの「命令」を受け取る経路と言え、NF-κBやMAPKが「自己完結型の初動スイッチ」だとすれば、JAK-STATはサイトカインネットワークを通じた免疫細胞間コミュニケーションの要となる経路です。
    • その他の経路(IRF経路など): ウイルス感染時などには、上記経路に加えてIRF(インターフェロン調節因子)経路が重要になります。樹状細胞やマクロファージでウイルス由来RNA/DNAが検知されると、TLR3/7/9やRIG-I/MDA5、cGAS/STINGといった受容体を介してIRF3やIRF7がリン酸化・二量体化し、核内でインターフェロン遺伝子の転写を誘導します​seikagaku.jbsoc.or.jp。その結果産生されるI型インターフェロン(IFN-α/β)はJAK-STAT経路(STAT1/2経路)を通じて周囲の細胞に抗ウイルス状態を樹立させ(抗ウイルス遺伝子の誘導)、NK細胞や樹状細胞自身の活性を高めます​seikagaku.jbsoc.or.jp。またIRF経路は一部の炎症性サイトカイン(例えばIL-12やIL-15の産生)にも関与します。さらに、樹状細胞やマクロファージの活性化には転写因子NF-AT経路(カルシウムシグナル経由で作動)やPI3キナーゼ/AKT経路など他の経路も関わり、多角的に遺伝子発現が制御されています。
    • 免疫応答への影響: これらシグナル経路の活性化により、樹状細胞・マクロファージは協調して免疫応答を進展させます。NF-κBやMAPKの活性化は炎症性サイトカイン産生と共刺激分子発現を増強し、局所の炎症環境を整えるとともに樹状細胞の成熟を促進します​seikagaku.jbsoc.or.jp。その結果、好中球やNK細胞が感染巣に集まりやすくなり、樹状細胞は効果的にT細胞活性化能を獲得します。またJAK-STAT経路を介したサイトカインシグナルは、免疫応答の方向性を決定づけます。例えば、マクロファージでのIFN-γシグナルは病原体排除に有利なM1型誘導をもたらし、樹状細胞でのIFN-α/βシグナルはクロスプライミング能力を高めウイルスに対するCTL誘導を強力にします。逆にIL-10によるSTAT3シグナルはこれら細胞のサイトカイン産生を抑制し、炎症を鎮める方向に働きます。IRF経路とI型IFN産生はウイルス感染時に不可欠で、これが欠損するとウイルス増殖を抑えられず全身感染を許してしまいます。まとめると、樹状細胞とマクロファージでは多彩なシグナル伝達経路が連動して作動し、病原体の種類や環境に応じて適切なサイトカインプロファイル・表面分子発現変化を引き起こすことで、免疫応答全体の誘導・拡大・制御に寄与しているのです。

4. 細菌やウイルス感染時の免疫応答との関連

  • 細菌感染時の応答: 病原性細菌が体内に侵入すると、樹状細胞とマクロファージはいずれも即座にそれを認識し、適切な免疫反応を引き起こします。ただし、その役割には違いがあります。
    • 樹状細胞の場合(細菌応答): 樹状細胞は細菌由来のPAMPをTLRなどで検知すると成熟が誘導されます。グラム陰性菌由来のLPSはDC表面のTLR4(+補助受容体MD-2、CD14)で認識され、グラム陽性菌のペプチドグリカンやリポタイコ酸はTLR2/6複合体で認識されます。例えばTLR4シグナルではMyD88を介したNF-κB経路が活性化し、樹状細胞はIL-6、IL-12、TNF-αなどのサイトカインを産生しつつ成熟に向かいます​seikagaku.jbsoc.or.jp。成熟したDCは取り込んだ細菌抗原をMHCクラスII上に提示し、二次リンパ組織(リンパ節)でナイーブCD4⁺T細胞に提示します​seikagaku.jbsoc.or.jp。この際、十分発現した共刺激分子(CD80/CD86/CD40など)を介してT細胞に共刺激を与え、ナイーブT細胞をエフェクターT細胞(例えばTh1細胞)へと分化誘導します​jbpo.or.jp。DC由来のIL-12はTh1細胞への分化を促す重要な因子であり、細菌感染下ではDCはIL-12やIL-18を分泌してインターフェロンγを産生するTh1応答やNK細胞活性を誘導します​thermofisher.com。誘導されたTh1細胞はマクロファージに活性化シグナル(IFN-γやCD40L刺激)を与え、細菌の排除を助けます。このように樹状細胞は細菌の情報を収集して適切なT細胞(主にヘルパーT細胞)を活性化し、免疫応答の「司令塔」として働くのが特徴です。また、一部の細胞内寄生菌(リステリア、結核菌など)に対しては、DCが感染細胞由来の抗原を交差提示してCD8⁺T細胞を活性化することで、細胞内に潜む病原体の排除につなげることもあります。もっとも、細菌感染では主役となるのはCD4⁺のヘルパーT細胞やそれに伴うB細胞の抗体産生であり、DCはその橋渡し役として機能します。
    • マクロファージの場合(細菌応答): マクロファージは細菌感染の現場で直接戦うエフェクター細胞です。組織に侵入した細菌はまずマクロファージの貪食受容体によって認識されます。補体でオプソニン化された細菌は補体受容体を介して、IgG抗体でオプソニン化された細菌はFc受容体(FcγR)を介して、それぞれ迅速に貪食されます。加えて、LPSや細菌の鞭毛、菌体成分などはマクロファージ表面のTLR4、TLR5、TLR2などで直接検知され、強力な炎症シグナルが作動します​seikagaku.jbsoc.or.jp。例えばTLR4/CD14によるLPS認識はNF-κB経路を活性化し、大量のTNF-αやIL-1βが分泌されて発熱や炎症を引き起こします​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。これらサイトカインは血管内皮に作用して血流を増加させ、血中から好中球を感染部位へ遊走させる効果を持つため、マクロファージ由来サイトカインは炎症の起点となります。またマクロファージ自身もケモカイン(CXCL8〈IL-8〉など)を放出し、好中球や単球を呼び寄せて増援とします。貪食した細菌はファゴソームとリソソームの融合によって殺菌・分解されますが、難殺性の細菌(結核菌など)はマクロファージ内で生存することがあります。そうした病原体に対しては、Th1細胞からのIFN-γとCD40L刺激によりマクロファージが高度に活性化され(M1化)、一酸化窒素(NO)や活性酸素種(ROS)を産生して強力な殺菌作用を発揮します。例えば活性型マクロファージはナイトロソ化合物やプロテアーゼを放出して内部の細菌を死滅させ、必要に応じて周囲の感染細胞ごと排除します。さらにマクロファージは処理した細菌由来抗原をMHCクラスIIで提示し、局所のリンパ節あるいは感染巣で再循環してきたエフェクターT細胞(Th1やTh17など)を刺激します。この再刺激によりヘルパーT細胞はさらなるサイトカイン(IFN-γ、IL-2など)を産生してマクロファージや好中球の活性を維持・亢進させます。特にIL-17産生Th17細胞は好中球の動員を高める役割があり、マクロファージから産生されるIL-6やIL-1βはTh17分化に寄与します。以上のように、細菌感染時にはマクロファージが前線で細菌を食べて殺し、炎症を起こして味方を呼び寄せ、樹状細胞はその情報をリンパ節に運んでT細胞に的確な指示を与えるという協力関係にあります。マクロファージと樹状細胞の連携により、適切なタイプの免疫応答(例えば結核菌にはTh1優位、莢膜菌には抗体&好中球優位など)が引き起こされ、細菌の排除へと導かれます。
  • ウイルス感染時の応答: ウイルス感染においても樹状細胞とマクロファージは協調して防御にあたりますが、ウイルスに固有の事情からその役割には細菌感染時とはまた異なる側面があります。特にウイルスは細胞内に侵入して増殖するため、ウイルスに対する防御ではタイプIインターフェロン応答とCTL(細胞傷害性T細胞)応答が重要であり、樹状細胞が中心的な役割を果たします。
    • 樹状細胞の場合(ウイルス応答): ウイルス感染に対しては、樹状細胞の中でも形質細胞様樹状細胞(pDC)が大量のタイプI IFNを産生する専門家として活躍します。pDCはToll様受容体7や9を高発現し、ウイルス由来のssRNAやDNAを敏感に検知すると短時間でIFN-α/βを大量放出します​thermofisher.com。放出されたタイプI IFNはオートクリン/パラクラインに作用して周囲の細胞に抗ウイルス遺伝子発現を誘導し(ウイルス増殖の阻止)、NK細胞の活性化や増殖を促します。また、通常の骨髄系樹状細胞(cDC)もウイルスに感染するか、もしくは感染細胞由来抗原を取り込むことで、MHCクラスI経路による抗原提示を行いCTL応答を誘導します。特にクロスプライミング能力の高いcDC1は、ウイルス感染細胞の破片やエクソソーム、遊離ウイルス粒子を取り込んでそれを細胞質へ逃がし、プロテアソームで処理したペプチドをMHCクラスIにロードしてナイーブCD8⁺T細胞に提示します​thermofisher.com。これに充分な共刺激と炎症環境(例えばDC由来のIL-12やタイプI IFNによる第三のシグナル)が加わることで、ナイーブCD8⁺T細胞は活性化されエフェクターCTLへと分化します。その一方で、DCは取り込んだウイルス抗原の一部をMHCクラスIIにもロードし、CD4⁺T細胞にも提示します。ウイルス感染初期にはNK細胞が主要なエフェクターとして感染細胞を排除しますが、そのNK細胞活性もDC由来のIL-12やIL-18、タイプI IFNによって高められます。リンパ節ではDCから抗原提示を受けたTh1細胞が誘導され、これらTh1はINF-γ産生やCD40L発現により、樹状細胞やマクロファージの抗ウイルス状態を更に強化します。特にCD4⁺Th細胞の助けはCTLの完全活性化と記憶CTLへの分化に必要であり、DCはヘルパーT細胞とキラーT細胞の両方を活性化することで強力な抗ウイルス適応免疫を立ち上げます​seikagaku.jbsoc.or.jp。以上のように、ウイルス感染時の樹状細胞はインターフェロン産生による初期防御と、CTL/Th1誘導による適応免疫展開という二段構えで中心的な役割を果たします。
    • マクロファージの場合(ウイルス応答): マクロファージもウイルス感染に関与しますが、その役割は細菌の場合と少し異なります。一部のウイルス(例:デングウイルス、麻疹ウイルス、HIVなど)はマクロファージ系細胞に感染・潜伏する性質があり、マクロファージ自体がウイルスのターゲットになることもあります。そのため、マクロファージは細菌と違い「自らが感染宿主となりうる細胞」としての側面も持ちます。しかし多くの場合、マクロファージはウイルスに対してサイトカイン産生と貪食による間接的な防御を担当します。ウイルス感染細胞から放出されたDAMPsや、ウイルス由来RNA断片などはマクロファージのRIG-I様受容体(RIG-I、MDA5)やcGAS-STING経路によって検知され、NF-κBおよびIRF3/7経路が活性化して炎症性サイトカインとタイプI IFNの産生を誘導します​seikagaku.jbsoc.or.jp。産生されたIFN-βはオートクリン作用でマクロファージ自身の抗ウイルス機能を高め、パラクライン作用で周囲細胞を抗ウイルス状態にします。同時にマクロファージはIL-15やIL-12、IL-18等を分泌してNK細胞を活性化・増殖させ、初期のウイルス感染制御に寄与します。ウイルスそのものや感染細胞の断片は、抗体や補体によってオプソニン化されるとマクロファージに速やかに貪食され除去されます。特に感染後期には中和抗体が産生されるため、マクロファージがFc受容体や補体受容体を介してウイルス粒子を貪食処理することで体内からウイルスを掃除する役割が大きくなります。一方、マクロファージ自身がウイルスに感染した場合には、その内部でウイルス抗原がMHCクラスI分子に提示され、CTLに認識されることで排除の標的となります。このようにマクロファージはウイルス感染時には「炎症の媒介役・後片付け役」として機能し、必要に応じて抗原提示を通じて適応免疫に協力する形になります。例えば肝臓のクッパー細胞(マクロファージ)は肝炎ウイルスの複製を抑えるサイトカインを出しつつ、死んだ肝細胞の破片を片付け、抗原提示でCD4⁺T細胞を再刺激して免疫応答を維持します。ウイルス感染症では過剰なマクロファージ活性化がサイトカインストームを引き起こす危険もありますが、適切な範囲でのマクロファージ応答はウイルス感染制御と組織修復に不可欠です。
    • 細菌 vs. ウイルス感染時の役割の違いまとめ: 細菌感染では主にマクロファージが物理的・即応的な防御の主役となり、樹状細胞がそれを支援して適応免疫を誘導する構図でした。一方ウイルス感染では、樹状細胞(特にpDC)のインターフェロン応答と抗原提示によるCTL誘導が防御の要となり、マクロファージは炎症の促進と感染細胞・ウイルスの後処理に回る傾向があります。もちろん、どちらの感染症においても両細胞は協力して働いており、互いにサイトカインを授受し合うことで免疫ネットワークを構築しています。例えばウイルス感染でもマクロファージ由来のIL-12がDCやNK細胞のIFN-γ産生を助け、細菌感染でもDC由来のIFN-αがマクロファージの殺菌能を高めることが報告されています。しかし、総じてウイルス感染時には樹状細胞(+NK細胞+CTL)主体の応答、細菌感染時にはマクロファージ(+好中球+Th細胞)主体の応答となる傾向があり、それぞれの病原体に合わせた免疫機構の役割分担がなされています。

以下に、樹状細胞とマクロファージの特徴を比較表にまとめます。

分類樹状細胞(DC)マクロファージ(Mφ)
主な役割病原体の早期検知と抗原提示による適応免疫の開始(免疫応答の司令塔)​thermofisher.com。自己寛容維持にも関与。病原体の貪食・消化と炎症反応の誘導による即時防御(現場のエフェクター)​thermofisher.com。組織恒常性の維持・修復も担当。
抗原提示能非常に高い。成熟によりMHCクラスIIを高発現しナイーブT細胞を活性化できる唯一の細胞​jbpo.or.jp。MHCクラスIによる交差提示でナイーブCD8⁺T細胞も活性化。中程度。MHCクラスIIは発現するが共刺激分子は低めで、主に活性化T細胞やメモリーT細胞の再刺激を行う。IFN-γ刺激などでMHC II・共刺激分子が増加すれば抗原提示能向上​thermofisher.com
貪食・殺菌能抗原を取り込む貪食能はあるが、取り込んだ抗原の一部は提示に回す。病原体の分解よりも抗原提示に特化し、直接的な殺菌は限定的。非常に高い貪食・殺菌能を持つ。異物を大量に取り込みリソソームで分解​thermofisher.com。活性化によりROSやNO産生が増強され強力な殺菌作用(M1マクロファージ)。
主要な分泌サイトカインIL-12(Th1誘導)​thermofisher.com、IL-6(炎症・Th17誘導)、IL-23(Th17維持)、IL-10(一部で免疫調節)、TNF-α、IL-1β(成熟DCは少量)、ケモカイン多数(CCL2/3/5、CXCL9/10など)を分泌。プラズマサイトイドDCは大量のIFN-α/β産生​thermofisher.comTNF-α、IL-1β、IL-6(炎症誘導)を大量産生​seikagaku.jbsoc.or.jp。M1型ではIL-12やIL-23も高産生​thermofisher.com。M2型ではIL-10やTGF-β(抗炎症)を産生。ケモカイン(CXCL8〈IL-8〉など)で好中球や単球を動員。
主な発現分子
(表面マーカー)
MHCクラスII (高)​thermofisher.com・MHCクラスI、共刺激分子(成熟時CD80・CD86・CD40高発現)​thermofisher.com、CD11c、樹状細胞特異的C型レクチン(DC-SIGN/CD209など)。TLR全般(特にTLR3,7,9を持つサブセットあり)​thermofisher.com、CCR7(成熟時に発現、リンパ節への遊走に必要)。通常CD14は低発現。MHCクラスII (中~高、活性化で増加)​thermofisher.com・MHCクラスI、共刺激分子(安静時低く、M1活性化でCD80・CD86・CD40発現増加)​thermofisher.com。汎用マーカー: CD11b、F4/80(マウス)、CD68。PRR: TLR全般(特にTLR4/MD-2/CD14でLPS認識)​pmc.ncbi.nlm.nih.gov、NLR(NOD2、NLRP3他)、RLR(RIG-I/MDA5)など。貪食受容体: 補体受容体(CR)、Fc受容体(CD16/CD32/CD64)​thermofisher.com、マンノース受容体(CD206)、デクチン-1(CLEC7A)​thermofisher.comなど多数。
細菌感染時の役割細菌由来抗原を取り込みリンパ節で提示し、主にTh1/Th17などヘルパーT細胞応答を誘導。成熟により高い抗原提示能とIL-12産生能を発揮​thermofisher.com。Th細胞を活性化することでB細胞の抗体産生やマクロファージ活性化を間接的に促進。感染初期に細菌を直接貪食・殺菌し、TNF-αやIL-1β放出で炎症を立ち上げる主役​seikagaku.jbsoc.or.jp。好中球を動員し、必要ならTh1からのIFN-γ刺激で殺菌能を強化(慢性感染巣では巨細胞や肉芽腫形成にも関与)。処理した抗原で局所のエフェクターT細胞を再刺激し、免疫応答を維持。
ウイルス感染時の役割ウイルス核酸の検知によりIFN-α/βを産生(特にpDC)​thermofisher.comし、抗ウイルス状態を誘導。交差提示によりナイーブCD8⁺T細胞を活性化してCTL応答を誘導​thermofisher.com。同時にTh1細胞も活性化し、CTLやマクロファージへの援護を準備。適応免疫の中心としてウイルス排除の司令塔となる。ウイルスや感染細胞を貪食・除去し、RIG-I様受容体やcGASで検知した場合は炎症性サイトカインとIFN-βを産生​seikagaku.jbsoc.or.jp。NK細胞を活性化するIL-12/IL-18を放出し初期応答を補佐。自らが感染した場合は抗原提示によりCTLの標的となり排除される一方、感染後期には抗体でオプソニン化されたウイルスを掃除する役割。サイトカイン産生を通じて免疫応答を支えるが、過剰な場合サイトカインストームの一因ともなりうる。

参考文献: 樹状細胞とマクロファージの機能・分子発現に関する知見は、免疫学の基本事項として広く確立されています​

seikagaku.jbsoc.or.jp

seikagaku.jbsoc.or.jp。樹状細胞が未成熟時にはMHC IIや共刺激分子の発現が低く抗原提示能が抑制されている点、成熟に伴いそれらが劇的に増加してナイーブT細胞を初期活性化できる点は重要な特徴です​

jbpo.or.jp。マクロファージは貪食・殺菌を介した自然免疫の主役であり、TLR4/CD14を介したLPS認識による炎症性サイトカイン産生など典型的な応答を示します​

pmc.ncbi.nlm.nih.gov

seikagaku.jbsoc.or.jp。両者はTLRやNLR等のPRR経路でNF-κBやMAPKを活性化してサイトカイン産生を誘導しつつ​

seikagaku.jbsoc.or.jp、それぞれの役割に応じた免疫応答を展開します​

seikagaku.jbsoc.or.jp。以上の情報は免疫学の教科書や総説に詳しく記載されており、本回答でもそれらのエッセンスをまとめています​

thermofisher.com

thermofisher.com

リンク

https://biken.yawaraka-science.com/qa/detail/101 樹状細胞って何?

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Posted by risan


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