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『無理ゲー社会』の絶望は『バビロン大富豪の教え』で解決!?

Kindleでお勧めされて、本の題名にも惹かれて以下の本を読んでしまいました。

2021年現在の『メリトクラシー』(知能の高い上級国民と、知能の低い下級国民に分断された社会)、その暴力的で対処不可能な現実を、豊富なエビデンスをもとに、解決策の提示無しに読者にたたきつけるエッセイです。

救いはないのかとさまよっていたところ、たまたま以下の本を読みました。

そう、こんな世の中でも、

  1. 収入の1割を貯金し、
  2. その資金でMSCIコクサイインデックスファンドを購入し、
  3. 人に感謝されるように今、懸命に仕事をする、

さすればお金も心も満たされる、と信じることにしました。(これはもはや宗教ですね。。。)

『子育ての努力には意味がない』は言い過ぎでは?

Polderman et. al., 2015

本書で最も衝撃的だったのは、以下の箇所です。

『第4章  遺伝ガチャで人生は決まるのか?』
『子育ての努力には意味がない』
で紹介されている行動遺伝学のメタアナリシスの論文(Polderman et al., Nature Genetics. 2015)です。

39か国の1400万以上のペアの双生児を対象とした1958年から2012年までの2748件の研究をメタ分析したもので、「パーソナリティ(性格)」「能力」「社会行動」「精神疾患」における遺伝率、共有環境、非共有環境の影響を推計しています。その一部を以下に抜粋します。

無理ゲー社会 (2021年) の図表4の一部

元の論文はNature Geneticsの論文で、チラ見してみましたが、Supplemental Figuresが何十個もあるようで、自力で読む気をなくしました。本書に転記されていれる図表4も、Charles Mullay(2020)から抜粋しているとのことで、1次データではないのですが、とりあえず信じることにしました。

この図の用語ですが、以下の通りです。

遺伝率

遺伝率は外見、性格、精神疾患などのさまざまなばらつき(分散)を遺伝要因でどれだけ説明できるかの指標で、身長や体重ではおよそ70~80%になるとのことです。

共有環境

共有環境は「きょうだいが同じ影響を受ける環境」のことで、一般には、家庭環境(子育て)とされています。

→しかし、自分が兄弟だったり、2人以上子どもがいたりすると明らかですが、どう考えても、特に勉強に関しては、2人は絶対に異なる環境になります。例えば、これは特殊な例ですが、兄と妹の2人兄弟がいたときに、親が兄に勉強を教えている横で、妹が勉強内容を聞いていて覚えてしまい、成績が学年1番になるという事例をいくつか聞いたこともあります。

非共有環境

非共有環境は「きょうだいが異なる影響を受ける環境」のことだそうです。

家庭内の「非共有環境」としては、「家族構成(生まれ順、性差)」「きょうだい関係(きょうだいへの嫉妬?)」「子育て(子どもへの愛情の違い)」などがあるとのことです。

家庭外の「非共有環境」としては、「学校や地元の友だち集団」「教師」「ソーシャルメディア(SNSなど?)」など一人ひとりが異なる体験をする環境が考えられるとのことです。そのなかでも最も影響力が大きいのが「ピアグループ(友だち集団)」だそうです。

朱に交われば赤くなる

の言葉通りです。

「やる気」と「集中力」は子育てに全く関係しない?

上記の図表4で、「共有環境」(家庭環境=子育て)の影響力が、「やる気」で0%、「集中力」で2%という衝撃的な結果であり、これをもって、筆者は、

やる気や集中力は子育てとはまったく関係ないようだ。

とコメントしています。

しかし、これには私は賛同しかねます。

そもそも、この研究は、全て「双生児」が対象であり、1人っ子は対象となっていません。個人的経験で恐縮ですが、

子どもが1人なのと、2人以上とでは、親の負担が2倍以上異なります。イメージ的に4倍以上です。ましてや、双子は年齢の異なる2人の兄弟以上に、幼少期の子育ての忙しさがあると思われます(大変さは1人の1.5倍くらいよという話も多いそうですが)。

2人兄弟の場合は、1人目が生まれてから2人目が生まれる1年から数年間は、「一人っ子」の状況です。双子の時点で、一人っ子と比べて、親の負担は相当大きく、子供の教育にかけられる時間も一人っ子と比べて限定されるというイメージがあります。そのため、共有環境である「子育て」の影響が、一人っ子と比べて下がっている可能性があるのではと考えます。

だとしても、やる気と集中力に対する子育ての影響はかなり低いという事実には変わりないので、やはり、衝撃的でした。

「学力に関しては、小学校に上がってからはなにをしてもムダ」も言い過ぎでは?

Heckman, Science. 2006

橘玲氏は、刺激的な文章で読者を煽りますが、これは視聴率かせぎのため(本を売るため)、わざとやっているのだと思われます。だからこそ、彼の本は読んでいてすごく面白いのですが、真に受けると、本書はそれこそ読者に絶望しか生みません。

私が、彼のエビデンスの解釈が極端すぎると確信したのは、この図表4の解説の部分でジェームズ・J・ヘックマンの『幼児教育の経済学』を引用しつつ、「学力に関しては、小学校に上がってからはなにをしてもムダ」と言いきったところを読んだ時でした。

ヘックマン教授はそんなことは言っていないし、私の解釈では、『何歳になっても教育の経済学的効果はゼロにはならない(上の図の曲線は、AgeがPost-schoolになっても、0より上の値を維持しています)』と、アラフォーの私でも自分を教育する経済的メリットはある、となります。

読んでいて絶望しかありませんが、子育ても含め、この社会を生きていく上で一度は読んでおいた方がよさそうな本だと思いました

『メリトクラシー』 (知能の高い上級国民と、知能の低い下級国民に分断された社会) な現代を文章化した本書を、一度は読んでおいても、人生に損はないと思いました。

参考リンク

https://news.yahoo.co.jp/byline/sowatoshimitsu/20210804-00250927

「なりたい自分」の諦め方 きちんと絶望するから希望が生まれる 曽和利光 2021/8/4


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